株式会社 新エィシーイー 代表取締役社長 小川 博 |
当社は2002年4月より新しい研究目標を設定し、4年間の研究をスタートした。これは、世界的にみて排出ガス低減およびCO2排出削減が強く要求される中で、3年前に設定した研究目標を見直す必要が生じたためである。 また、2002年2月に新長期規制が定まり、テスト法もトランジェントサイクルが盛り込まれ、NOxとPMの低減レベルが大きいので、後処理も使うなど、対応技術の幅が広く、レベルが高くなった。 一方、欧米のディーゼルエンジンはハイテク化を着々と進め、低燃費・高出力率を前進させてきた。日本の10Lエンジンは、265kW (360PS)の出力であるが、欧米の10Lエンジンでは310kW(420PS)の出力であり、同じ排気量でも出力が大きい。 これらのことや排出ガス浄化の将来の要求を考慮し、研究目標はNOxは新長期規制の1/10で、スモークレス、CO2の排出レベルはガソリンエンジンの半分とした。この高い排出ガス低減目標を掲げ国のプロジェクト「スーパークリーンディーゼル車の開発」応募し採択された。これは大変な仕事ではあるが、私達の研究成果がそのまま社会の役に立つことであり、新エィシーイーとしてやりがいのある仕事である。低公害と大幅なCO2削減を目指す技術は、現行のターボインタクーラ(TI)エンジンよりも、さらにシリンダ内により多くの空気を入れる高過給化、広域多量EGR化およびこの条件に適合した燃料噴射系と燃焼室形状を見出すことである。また高度な後処理装置に対応する燃焼の条件も要求される。 このようなエンジンではシリンダ内最高圧力Pmaxは大幅な増加が予想されるので、従来の15MPaから2倍の30MPaまで耐えられるエンジン強度に全面的に変更している。この単気筒エンジン(ボア×ストローク;135×140mm)でホールノズル(0.17mm×6孔)、噴射圧力200MPaの条件で、過給圧(Pb:ゲージ圧)を増加させ、シリンダ内の空気量をNAエンジンの5倍まで増加させた。現在、実験装置が整い、実験に着手したばかりであるが、その一端を紹介する。図1に過給圧を増加させたときの圧力線図と熱発生率の変化を示す。過給圧Pb=100kPaのNAの2倍の空気量では熱発生率はやや緩慢な燃焼であるが、さらに空気量が多くなり,Pb=200〜300kPaでシャープな燃焼に変わり,正味熱効率が向上することが推察できる。図2に図示平均有効圧力IMEPを3000kPaまで増加させたときのPmax、正味熱効率ηfbなどの変化を示す。現行の大型TIエンジンの過給はおおよそPb=100kPaで空気量がNAの2倍であり、さらに空気量が増加することにより正味熱効率が向上することが分かる。また過給度を増すと正味熱効率のピークはIMEPの高い側に移行するという興味深い結果が得られた。当初Pmaxを増加させた燃焼はフリクションが増大して正味熱効率が改善しないとの心配もあったが、それは取り越し苦労であった。 |
図1 噴射量q一定で過給圧Pbを増加させたときの 圧力線図と熱発生率ROHRの変化 |
図2 過給圧Pbを増加させたときの図示平均有効圧 IMEPと正味熱効率 の関係 |
図3に過給圧をNAの約3.5倍まで増加させ、空気過剰率λ一定で、同一ノズル仕様で、噴射圧力100MPaの場合の燃焼写真を示す。この写真から、過給圧を上げると着火時期が早くなり、燃料噴射と同時に燃焼が始まり、かつ火炎部分と未燃の空気領域が明確に分かれている。動画を見るともっと鮮明に分かるが、高過給下では火炎部分と空気部分とが明瞭に分かれ、密度差が大きいためか、混合しにくいように推察される。したがって、高過給下でも火炎と空気部分が混合しやすくなる工夫が重要と思われる。 始めたばかりの実験結果の紹介であるが、新しい目標と社会貢献を念頭に新エィシーイーとして、新たな気持ちでディーゼルエンジンの燃焼に取り組みますので、皆様の御協力、御指導、御鞭撻を今までどおりお願いしたい。 |
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